179番です。

 

I did though on one occasion not long ago, pluck up the courage to attempt the required sort of reply.

 

 pluck up を強調したかったようです。did を入れています。その間に though 節が挿入されているので、分かりにくい形になっています。この部分をはずして did と pluck up をくっつければ見やすくなります。

強調したいので、普通はあまり使わないオーバーな言葉を使っているようです。courage 勇気をもって とか、pluck up 引き抜く などですね。

そんなに、冗談を言うのに決心がいることなのかと、思ってしまいますが。人の習い性というのはこういうことなのかもしれません。

 

分解というより、ちょっと見やすくなるように並び替えをしてみます。

 

① I did

② though on one occasion not long ago,

③        pluck up the courage

④           to attempt the required sort of reply.

 

①の did は、③の pluck up へ続きます。②の挿入部分は、前に持っていくのが普通でしょうか。一般的な語順にするなら、

Though on one occasion notolong ago, I did pluck up the courage

となります。

did は、強調のための助動詞で、ここも強調しない形にするなら、I plucked up です。

pluck は、ぐいっと引っ張る、ということで、勇気をぐいっと引っ張る、わけですね。勇気をふるって、という感じです。

ちょっと前に、思い切って、冗談を言うことに 挑戦してみた ということで、スチーブンスは、その顛末を話してくれるようです。

 

①は、「私は、した」でしょうか。

②は、「実は、ちょっと前のことになりますが」で、

③は、「勇気をふるって」で、

④は、「お望みの冗談をお返ししてみようと試みたことが」です。

 

つなげると、

「実はちょっと前のことになりますが、私は勇気をふるってお望みの冗談をおかえししてみようとしたことがございます」

となります。

ということで、

「実は少し前のことですが、私は思い切ってお望みの冗談をお返してみようと考えたことがございます」

としました。

  

 

178番です。

 

One need hardly dwell on the catastrophic possibility of uttering a bantering remark only to discover it wholly inappropriate.

 

久し振りに、接続詞などのない単文ですが、分解してみます。

 

① One need hardly dwell

② on the catastrophic possibility of uttering a bantering remark

③ only to discover it wholly inappropriate.

 

こんな感じになるでしょうか。

①の One が主語で、dwell が動詞( need が助動詞、hardlyは副詞、で、この三語で動詞句というわけです) で、SVの文型です。

②は前置詞句、③は不定詞句ということです。

 

hardly は、クセのある副詞で、要注意です。否定的に訳す必要があります。

not 以外の否定表現ということになります。

そういうものを書いておくと、

few / little  「ほとんどない」

hardly / scarcely  「ほとんど~ない」

seldom   「めったに~ない」

が、あります。

 

ということで、①は、「人は ほとんど  暮らさねば ならないのは ない」となります。「とても耐えられない」というような感じですね。

 

②はある状況を説明しているようで、すなわち、

「冗談のお返しを言うことの壊滅的な可能性において」となりますが、要するに、

「下手な冗談を言って、その場を白けさせるかもしれない」くらいなことでしょうか。

 

③は、不定詞句ですが、it は②の a bantering remark ですが、discover は発見するなのですが、わかる、くらいです。となると、

「それが全く場違いだとわかる」あたりでいいようです。

 

まとめると、

「全く場違いだと分かるような下手な冗談を言って、その場を白けさせることになるようなことには、とても耐えられない」

となるようです。もう少し流れのある訳がありそうですが。

 

 

 

 

 

177番です。

 

For one thing, how would one know for sure that at any given moment a response of the bantering sort is truly what is expected?

 

「書は人なり」と言いますが、「文も人なり」なのでしょう。スチーブンスはこういう性格、あるいは職業柄こういう風になってしまったのかもしれません。なんとも回りくどい文のように感じます。

ということで、分解です。

 

① For one thing,

② how would one know for sure

③                                      that   at any given moment

④                 a response of the bantering sort  is  truly

⑤                                                         what is expected?

 

こんな風に分解できるでしょうか。

①は、前置きで「たとえば」とか、「お聞きしますが」という感じです。

②の sure は名詞です。前置詞にくっつくのは名詞ですからね。ただし、これは熟語です。「確かに」とか「確実に」と副詞に考えればいいのです。つまり、副詞句として挿入されているわけなので、これを取り除いて、know の目的語が that 以下と考えれば、構造がシンプルになります。

ただ、この sure が名詞であることを利用して、③の that の先行詞として使っていると考えてもよさそうで、この方が複雑ですが、味が出るように思います。

単純な副詞と考えるなら、that の代わりに 先行詞を含む関係代名詞の what を使う手もありますね。その場合は、

how would one know for sure what at any given moment a response of the bantering sort is truly what is expected? となって、what 以下が know の目的語(目的節)になるのですが、すんなりとしてしまいます。原文のように、that が sure に絡んだ方が、スチーブンスのセリフらしい感じがします。

③の残りは、挿入句です。「与えられた瞬間に」ですから、「その都度」あたりでしょうか。要するに相手が、大体はファラディさんですが、冗談を言ってきたときに、とか、言ってくるたびに、という感じです。具体的に、「冗談を言われたときに」と言ってもいいと思います。

④と⑤で、SVCの文型になっています。

④の a response of the bantering sort が主語で、⑤の what is expected が補語というわけです。

④の「冗談のようなものでの返事」と言っていますから、スチーブンスは自分の冗談にはやはり自信がないのですね。

⑤の what は、先行詞を含む関係代名詞です。「期待されていること」で、「こと」が入っていることがミソです。

 

ということで、

「お尋ねしますが、冗談を言われたときに、本当に期待されていることは、冗談のようなことを返すことだと、どなたがどこまで確信しているでしょうかね」

としましたが、回りくどいとしてももっといい訳がありそうです。

 

 

 

 

176番です。

 

but bantering is of another dimension altogether.

 

前の文はセミコロンで終わっていました。つまり、この文は前の文の一部、つまり続きというわけです。ということで、小文字で始まっています。

 

それはともかく、ここでは of が表していることが重要ですね。

辞書を見ると、前置詞 of は、

所属 所有  の、 に属する  の所有している

記述     の性質を持つ

同格     という

限定     についての

分離     から  を

根源     から

材料・構成要素 で作った から成る

などが書いてあります。 

ここでは、材料とか根源とかが近いでしょうか。

 

ということで、

「冗談を言うというのは、全く次元の違うことでありますまいか」

としました。

 

 

 

175番です。

 

It is all very well, in these changing times, to adapt one's work to take in duties not traditionally within one's realm;

 

セミコロンで終わっています。内容は次の文に続くのですが、ここでいったん切っておきます。

 

It は形式主語ですね。真の主語は、to adapt one's work です。

「誰かの仕事に適合させることは、非常に良いことです」

となります。

何を適合させるのかというと、duties ですが、これには条件が付いていますね。

それが not traditionally within one's realm; というわけで、その内容は次の文176番で説明されるはずです。お楽しみに! 

さて、not traditionally within one's realm は、結局は「今までしてこなかったこと」となるのですが、誰かの仕事としては伝統的ではなかったこと、とスチーブンスは書いています。

ところで、そんなに冗談を言うことが苦痛なのですかね。イギリスの執事というのは、まっすぐしかめっ面で立っているだけなのかと思ってしまいます。こういうことが威厳とか権威につながることなので、ろくなことにはならないと思うのですが。

もっとも、多少は気が咎めているようで、in these changing times と気を使ったふりはしています。

 

ということで、

「このどんどん変わっていく世の中で、今までの仕事のやり方に今までにはなかったやり方を取りこんで適合させていくことは、非常に良いことです」

としました。

 

 

174番です。

 

But I must say this business of bantering is not a duty I feel I can ever discharge with enthusiasm.

 

この文も短めで助かります。途中、bantering の後ろに関係代名詞 that もしくは which が略されています。と言い出すと、I feel や I can の前にも that が省略されていることになります。

関係代名詞を補うと、それを区切りにしてそれぞれが一つの文になり、その文ごとに動詞が一つずつ備わっていることになります。英語の基本的ルールが満たされているわけです。

 

ちなみに、省略されているものを補って、分解してみると、

But I must say this business of bantering

                                        (that) is not a duty

                                                   (that) I feel

                                                      (that) I can ever discharge with enthusiasm.

となります。

 情熱をもって尽くすことができるところと

 感じられるところの

 義務ではないところの

 冗談を言うという仕事というべきです。

関係代名詞を「ところと」とか「ところの」と日本語ではその次にくる言葉、つまり用言か体言に合わせて、連用形か連体形かに変化させてつなぐことができます。英語では関係代名詞のthat か which を使うわけです。

 

というところで、まとめると

「しかし、この冗談を言うことが情熱をもって尽くすべき職務だとはどうしても感じられないのでございます」

としました。

 

 

 

 

173番です。

 

This is, as I say, a matter which has given me much concern.

 

これは分解の必要はなさそうですね。

which が関係代名詞で、先行詞は a matter です。つまり、「このこと」を改めて後ろから修飾しているということです。

この後ろから修飾するという事実は、英語のクセですね。

これに対し日本語は、前から修飾するというクセがあります。修飾する言葉が長いと修飾する言葉がなかなか出てこないということが起こり、何を修飾しているのかわからないとなりますが、英語だって修飾する言葉が長ければ、それと似た事態は起きているはずです。

 

「このことは、私に、大きな関心を与えたところの、事柄です」

と直訳できます。その途中、あるいは先頭に、as I say の部分を挿入すればいいわけです。先頭の方がおさまりがいいようです。

 

ということで、

「要するに、このことは私に突き付けられた重要課題でございました」

とします。 

 

教室では、

「いまはこれが私に一層懸念をもたらすことなのです」

との訳が出ました。

 

ということで、もっと思い切って

「実を申せば、このことが頭から離れないのでございます」

としました。