27番目の文に行きます。

 

As you might expect, I did not take Mr farraday's suggestion at all seriously that afternoon, regarding it as just another instance of an American gentleman's unfamiliarity with what was and what was not commonly done in England.

 

not at all  全然、すこしも ない

that afternoon  その日の午後 その時

regard   とみなす と考える

instance   例 実例 

familiarity  精通していること 熟知 親しさ 

 

長い文ですが、こういうのが執事のスチーブンスの口癖でしょうか。

特に、As you might expect, などから始めることが多い気がします。

 

さて、you は、「あなた方」ですが、具体的には「読者の皆さん」です。

might は、仮定法の目印です。読者のあなた方が expect 推測する内容を、話し手のスチーブンスが想像していることを表しています。

「ご想像のとおり」とか「お考えのように」とすればOKだろうと思います。

あるいは、「そうおっしゃられたのですが」と、スチーブンスのその時の態度・状態を表すのもいいかなと思います。

 

「ご想像の通り、その時私はファラディ様の申しつけをまともには受け止めませんでした」

「そうおっしゃられたのですが、その時はお申し付けをまともなものとは考えませんでした」

 

regarding it as just another instance は、it を another instance と regard する、みなす のですが、動名詞の形になっています。

現在分詞も動名詞も、同じ形で見分けがつかないので困ります。

書き換えれば、for I regarded it as ~とでもすればよさそうで、

「それは、別の例とみなしたから」「別の例とみなして」

となります。

だいたい、「~して」とやっておけば、うまくいくようです。

 

unfamiliarity は、熟知していないことですから、「不慣れ」「不案内」などとすればよく、

it は、Mr farraday's suggestion ですから、また

with は、前置詞「について」で、別の言葉では on とか about あたりでしょうか。

「イギリスで普通にしていること、あるいは、していないことについて、あまり慣れていらっしゃらないアメリカの紳士の方がたの別の例とみなしたから」

というのが直訳になります。

 

「別の例」ということは、「読者の一人一人が、それぞれにいろいろな例を思い付くはずですが、それを other としたときに、こういう another もありますよ」という感じを表しています。二つも三つも答えが考えらるときには、こんな言い方があるということですが、日本語と英語の構造からくる表現方法の違いを感じさせられます。

 

what was and what was not commonly done in England というのも英語らしい表現と思うのですが、同時に日本語にしやすい稀有の表現と思います。

what は、先行詞を含む関係代名詞というやつです。受け身の形になっています。イギリスで一般的に「されていること」と「されていないこと」というのは、イギリス人がやらないということをやっているのを含めて、やっていることですから、つまり、イギリス人のやり方であり、つまりのつまり、「イギリス人の流儀」を表しています。

どんなに間違っていようとも、「こういうやりかた」というのはどの国民も持っているものと思うのですが、それで相手もやれているのだからと両方が思えば、即解決だけれども、そうはいかないのが流儀でしょうか。

 

というところで、まとめて、

「ご想像のとおり、私はご主人様のお言いつけをその時はまともには受け止めませんでした。何と申しましてもアメリカの方ですから、イギリスで通ることと通らないことの区別によくご存じないことからのお言いつけであろうと私は考えておりました」

としました。

 

「通る」と訳したのは、ちょっとスチーブンスが頑固だということを強調しすぎているかもしれません。