44番です。

 

Once the transactions were over - transactions which had taken this house out of the hands of the Darlington family after two centuries - Mr Farrday let it be known that he would not be taking up immediate residence here, but would spend a further four months concluding matters in the United states.

 

once     いったん~すると するやいなや 

transaction   処理 処置 取引 意見交換 会報 

 

こんどは長いですね。分解整理をしてみます。

 

1  Once the transactions were over

2               - transactions

3                          which had taken this house

4                                                                 out of the hands of the Darlington family

5                                                                 after two centuries -

6  Mr Farrday let it be known that

7                       he would not be taking up immediate residence here,

8                      but would spend a further four months

9                                          concluding matters in the United states.

 

と、こんな風になりました。

 

この文は、前の文の困難な状況を説明しているわけです。どんなことがあったのでしょうか。

 

1行目は、その困難なことは終わっていたとスチーブンスが話し始めます。

Once は、When とよく似ています。

違いは、when は、ずっと続いている感じがしますが、once の方は、ある一点の時、その時点だけという感じがします。童話や昔話の物語で、Once upon a time で始まるのも、連続的にさかのぼっていくのではなく、ポンと昔のある時に戻るという感じです。

その謎、勝手に不思議がっているだけですが、を解き明かすカギは、発音にあるかもしれません。「オンス」と読まずに「ワンス」と読むことに注目すれば、one+ce がそもそもの形だと推理できます。遠く離れた一点を意味するわけですね。

ce は副詞を作る語尾だと、シェークスピアジュリアス・シーザーの始めの部分で、hence thence の成り立ちの時に考えましたが、その ce です。

結局、スチーブンスが話し始めた時点からは、もっと離れたある時点で終わっていたことを表していることになります。

「交渉はもう終わっていたのですが」となると思うのですが、

永年この邸館で働きながら、執事という立場では、譲渡交渉に当たってはなんとも手の出しようがないという歯がゆさが伝わってきます。

 

で、2行目から5行目にかけて、ハイフンで囲んで、その交渉の顛末を挿入するわけです。

「その交渉とは、この邸館が二世紀にも及んだダーリントン家の支配の手を離れるというものですが」

ということになります。「交渉」ではなく、「契約」とか「身売り」なども訳語の候補です。

 

家を買ったり、借りたりの交渉がまとまれば、すぐに引っ越すというのが当たり前ですが、ファラディさんはそうではなかったのが不思議ですが、その謎はすぐに明らかに。

 

6行目は、「ファラディさんは、that 以下のことを知らせて下さいました」ですね。

注意したいのは、let です。活用は、let  let  let で全部同じです。ここでは実は過去形でつかわれています。

it が目的語、詳しく言えば形式目的語で、真の目的語は that 以下になるわけです。

 

that 以下の文は、but で結ばれていますが、二つあります。二つとも,動詞部分にwould が使われています。どちらも仮定法で、スチーブンスが頭で考えた、つまり想像していることを表しています。

 

7行目の be taking が面白いです。進行形ですね。

引っimmediate越してずっと住むという感じを表しているのでしょうが、想像しているスチーブンスにしてみれば、ずっと居座るのかよ、という気持ちかもしれません。

 

冒頭の Once から始まり、5行目では after two centuries 、7行目では immediate 、8行目の further four months とか、9行目の concluding など、時間の長さを表したり、連想させたりする言葉が連続しています。

これも縁語ということになるのでしょうか、そういう同類語を重ねて雰囲気を作り出すというのは、日本人的だなと思います。

 

また9行目の concluding は、( when he was been ) を補って、「処理している間」と考えればいいと思います。つまり、現在分詞ですね。

 

ということで、次のように訳しました。

「まさに時代の一区切りがついた時でございました。その一区切りとは、この邸館が二世紀にもわたるダーリントン家の所有の手を離れるというものでございますが、新しい所有者のファラディ様はアメリカでの残務処理にまだ四か月ほどかかること、したがって急にはここにお住まいになる予定はないとのことをお知らせくださいました」