51番に行きます。小文字で始まっています。

 

quite aside from the matter of the staff, my new employer in several other instances had had occasion to call upon such qualities as it may be my good fortune to possess and found them to be, I would venture, dependable.

 

aside    かたわらに 別にして さておき

call upon = call on   前に来るように命じる を訪ねる 頼む 求める

occasion   時 場合 出来事 行事 機会

fortune    富 財産 運命 宿命

venture    冒険 危険な試み 思い切って~する

dependable    信頼できる あてにできる

 

スチーブンスの口癖にはだいぶ慣れたと思ったのですが、まだまだのようです。

落ち着いて、並び替えをしてみます。

 

1  quite aside from the matter of the staff,

2  my new employer          

3          in several other instances

4                              had had occasion to call upon such qualities

5                                                                     as it may be my good fortune to possess

6                        and found them to be

7                               , I would venture,

8                                                            dependable.

 

 と、こんな具合にしました。なぜこうなるかが問題ですが、次の説明が、その説明といえるかどうか。

 

まず、ヒントになるのは、記号類です。ピリオド、クエスチョン、コンマ、コロン、セミコロン、ハイフンなどです。

次に見るべきは、 and  but  or などの等位接続詞と、when  if  though などの従属接続詞です。これで、主たる文(節)と従属節が、大まかに判別できると思います。

ここまでは、形のうえでの判断です。次からは、意味を考えながら、分解します。

続いて、その節の中での動詞のかたちを判断します。つまり、単複(単数、複数)と、時制(現在、過去、未来)と、法(直説法、仮定法、命令法)を判定します。動詞は、一つの文(節)には、一つしかありません。

もし、二つ目の動詞を必要とする場合、それは、不定詞、動名詞、現在分詞などに姿を変えているはずです。それが、どこに掛かっていくかを見ることになります。

動詞が分かれば、それに対応する主語を探すことになるのですが、it  や that  などの代名詞が要注意です。前の文の内容を受けていたり、その文の後ろの内容を受けていたりします(形式主語、形式目的語、スチーブンスはこれが大好きです)。

こんな順に、文の構造を判断すればいいのではないかと思うのですが、話しているときには、コンマだ、ピリオドなどと言わないわけで、それで構造が分かるというのは不思議ですね。

 

それはともかく、今回の文に当てはめてみると、 

1行目は、ほかのものとは無関係に挿入されている副詞句です。

2行目は、主語となっている語群ですが、対応する可能性のある動詞を探すと、4行目の had と、6行目の found が見つかります。しかもこの二つは、文法的に同じ立場で、and 等位接続詞で結ばれていることも分かります。

ほかにも、may be がありますが、これは時制が現在で、had の過去とは合わないので捨てます。

さらに would venture も見つかりますが、これは挿入文であることを、コンマで挟んで明らかにしていますから、対象から外します。

残ったhad とfound は、同じ過去形です。同じ文法的要素をつなぐ等位接続詞の and で結ばれており、共通の主語は2行目の語群と考えても矛盾はありません。

5行目の現在形は、過去から未来にかけて、その時々の現在において、そうなっていると考えられる人間の性格とか才能などを表現していると考えると、この行は4行目の qualities を説明していると納得できるかなと思います。

4行目5行目は、英語ではこう言うのかとわかるのですが、日本語にはすんなりとは訳せません。

体言ならば体言に、用言ならば用言に変換するのではなく、体言から用言、用言から体言にクロスに移し替えると、日本語らしい表現に落ち着くのではないかと思います。すなわち意味も分かるようになるのだと思います。

それはともかく、7行目は挿入の文で、8行目は、6行目の found の補語だすれば、構造の問題はとりあえず解決します。

 

後になりましたが、3行目は前置詞句で、挿入的に付け加えた感じですが、意外と重要です。

この前の文で、アメリカから手紙で,指示がとどいたとありましたが、その手紙のやり取りは一回だけではなく、several も繰り返されていたことがわかります。

それらの数回の手紙、あるいは文書による交流を通じて、つまり、文体とか筆跡などから、人となり、を判断することができたわけですね。

「幾度かの手紙のやり取りを通して」とか「手紙のやり取りを何度も致しまして」

と、実際にあったことを言葉にします。

 

1行目は、前の文の状況から、読者の目をそらすことが目的です。つまり、職員の補充がうまくいかなかったことは、すなわちスチーブンスの責任であり、その責任を追及されると能力の否定につながるので、うやむやにしておきたいと考えて、

「職員の問題はさておき」

といって、自分の都合のいいところを書くわけです。

 

まず、4行目と5行目を訳してみます。

「私が持って生まれた、良い資質としての、そのような性質を求める機会を持った」と、直訳できます。

で、次の行は

「それらは信頼できると、思い切って言うと、見い出した」

となります。

 

「持って生まれた私の性質が、良いものであると、見抜き」、さらに

5行目の挿入文は、「思いきって言う」とは、自分のことに関していう場合、日本語なら、「自分で言うのも、お恥ずかしいが、」という方が自然で、「自分で言うのもお恥ずかしいが、信頼に足る」という感じです。

 

とはいえ、これが日本語かと、首をかしげたくなります。

 

例えば、

I have no money.  という文ならば、日本語では「私は、ない金を持つ」とはしません。

「ない」の位置が問題で、一般的な日本語では、「私は、金を持つ ない」と文末に否定語を置きます。最終的に「私は金を持たない」あるいは「私は金を持っていない」という日本文に訳すわけです。

これは、英語と日本語の動詞(用言)の位置からくる構造的な特徴だと思うのですが、単語を単純に置き換えたのでは、意味としては間違いではないものの、妙な文になってしまうという見本だと思います。

ということで、言葉の順序を考えます。

 

「私の性格の優れた点んをお認めいただき、さらに、自分で言うのもなんですが、信頼がおける人間だとお考えいただきました」

とすればいいかなと思います。

 

この部分の言葉の順が解決すれば、あとはくっつけるだけといってよく、

全体は、

「職員の問題はさておき、新しいご主人様には、幾度かの手紙のやり取りを通じて、私の性格の優れた点をお認めいただき、さらに、自分で言うのもなんでございますが、信頼ができる人間だとお考えいただきました」

としました。