72番です。

 

The two young girls, I predicted, would not find such changes so difficult to accommodate, but I did all I could to see that Mrs Clements suffered the least adjustments, to the extent that I undertook for myself a number of duties which you may consider most broad-minded of a butler to do.

 

 predict   を予言する 予測する 

accomodate   に適応させる 順応させる 受け入れる

suffer   を経験する をこうむる を耐え忍ぶ

undertake   を引き受ける を始める を担当する

broad-minded   偏見のない 寛大な 寛容な

 

1  The two young girls

2  , I predicted,

3                would not find

4                                  such changes

5                                           so difficult to accommodate,

6   but I did all

7           (which) I could to see

8                、    that Mrs Clements suffered the least adjustments,

9                        to the extent

10                                  that I undertook for myself a number of duties

11                         which you may consider most broad-minded of a butler to do.

 

と、こんな風になるでしょうか。

構造としては、but で二つの文が結ばれているのですが、前半はともかく、後半は複雑ですね。

一か所、7行目にwhich を補いました。

 

1行目が、前半の文の主語ですね。3行目が、動詞で、4行目が目的語、5行目が目的補語となっています。つまり、SVOCの文形です。

「二人の若い女性職員が、そういう変化を、受け入れるのは、それほど難しく、ないと気がつくことは、私は予想していました」

という直訳になります。

 

but の後の文は、構造的には、I did allto the extent 以下が接続し、その間に7,8行目が挿入されています。

 

6行目は、「私は、すべてをしました」ですが、all が7行目の節で説明されています。

その「すべて」とはいうものの、範囲があるわけで、その範囲は9行目 to the extent になっています。「~までのことはすべてしました」となります。

 

7行目は、「私が気がつくことができた」となります。ここの could は、仮定法ではなくて、can が時制の一致で、前の文の did と一致させて過去形になったものです。単純に「できる」とすればいいです。日本語ではこの時制の一致はあまり気にしないので、「できる」でも「できた」でも、どちらもOKですが、いちいち言わず「気がついた」で済みますね。

 

8行目は、「クレメンツさんが、最小の変化の影響を、受ける、こと」となりますが、「最も少なくてすむように」とした方が、自然な日本語になります。

 

ここまで、続けてみると、

「クレメンツさんが受ける影響が、最も少なくてすむように、気がついたことは何でもしました」

となります。

 

10行目は、「職務の多くを私自身で引き受けました」で、その職務は、11行目 which 以下ということになります。

11行目は、「あなた方が、考えるかもしれない」と、読者の考えを想像しているのですが、may をそのまま使っています。いつものスチーブンスなら、might と仮定法を使うところです。

「最も広い心の執事」ですが、物分かりの良い、とか、固定観念の薄い、というような感じと思います。

執事とか召使の世界では、ヒエラルキーが厳格で、その分職務範囲が固定されているわけで、他人の職務には手を出さないという了解が通用していると考えます。

ところが、たった四人しかいないし、そんなことをいっても始まらないし、しかも、若い二人を見つけてきたのは、クレメンツさんだし、あれこれ考えると、スチーブンスは

頭が上がらないのですね。でも、永年経験の豊富な執事は、そんな弱みは見せられないのです。

だから、ここは仮定法のmight で、想像したのではなく、直説法の may で、断定したのかもしれません。

 

「最も融通の利く執事ならするかもしれない」とか

「執事がこんなことまでするのかと思われるようなことまで」とか、

に訳すことになりそうです。

 

というところで、

「若い二人が、そんな変化に合わせるのは、それほど難しいことではないでしょうが、クレメンツさんについては、最も影響が少なくなるように配慮を致したところでございます。つまり、皆様が、執事がこんなことまでするのかと思われるようなことも、私がしておくようにいたしました」

と訳しました。