5 ジュリアス・シーザー 5

 1幕 1場 ローマ市街 5

 

 FLAVIUS
But wherefore art not
in thy shop today?
Why dost thou these men
about the street?

SECOND CITIZEN
Truly, sir, to wear out their shoes
to get myself into more work.
But indeed, sir, 
we make holiday to see Caesar  
and to rejoice in his triumph.





                       
wherefore         
      どういう理由で 
      なぜ
      
       
     
      
  







    


    

 フラヴィアス 
なるほどわかったが、なぜ店におらんのか。
そこの者共が、どうしてここ街のなかに
おるのか。


                                               
住民2
そこが肝心ってね。
歩けば、底が減って、商売繁盛でがす。
ってのは、冗談でがすが、
ほんとのとこはね、        
商売を休みにしてね、          
シーザー様の勝ち戦のお祝いに         
駆け付けたってことですよ。        
                                  

 なんとなく物語の進む方向が分かってきた感じです。

凱旋してくるシーザーを住民が祝おうとしているようです。そうなると、シーザーに対立しそれを阻止したいと考える側もいるわけで、その争いがどう展開するか、ということですね。

 

それはそうと、私は、新興改革派のシーザーは織田信長だと考えます。そう考えると、キャスティングがぴたりと一致します。

シーザーを暗殺した元老院守旧派のブルータスは、明智光秀です。さらに守旧派ポンペイウスは、足利義昭ですね。

対して、新興勢力側は、アントニー豊臣秀吉、オクタヴィアスは徳川家康となり、シーザー亡き後、この順で実権を握ります。

シーザーは紀元前1世紀、織田信長は16世紀末ですから、時代は1600年も離れています。にもかかわらず、登場人物とその役どころは不思議に一致しています。

新興実力派と既得権守旧派との争いは、こういうものなのでしょう。ほかにも符合点はいろいろあると思います。

そればかりでなく、文化経済的発展段階の共通事項として、地球上すべての国の歴史にはそんな兆候と事件が起きているはずです。

 

さて、FLAVIUS のセリフの1行目 But wherefore art not in thy shop today? ですが、主語が省略されています。be 動詞 art は、二人称単数直説法現在形ですが、対応する二人称代名詞は thou です。主格 thou 所有格 thy 目的格 thee となります。

ちなみに、動詞の形は、are が art 、 have が hast 、 will が wilt 、shall が shalt 、 were が wert などとなります。ほかには、canst  didst  prayest  のように -st  -est  がつく変化をします。 

主格は、「なんじは、そなたは、そちは」などと辞書には出ていますが、ここでは、警備役人が住民に向かって話しているので、「お前は」「貴様は」あたりが適しています。

「それはそうと、なんで店にいないのか」と訳し、「お前」などを省略するのが日本語らしいかもしれません。

 

次のセリフ Why dost thou these men about the street? は、do(dost) を使役動詞のように使っています。about の前に go か walk を補ってやると、歩き回る、となって分かりやすくなると思います。

「なぜ、この者たちを連れて歩き回っているのだ?」となります。

 

SECOND CITIZEN の返事は、

Truly, sir, to wear out their shoes (will be ) to get myself into more work. 

と、途中に will be か、簡単に is を補うと、

to不定詞 will be (is) to不定詞 という格好になります。

不定詞の名詞的用法というやつで、

「靴をすり減らすことは、私自身の仕事がふえること」となります。

それに Truly, sir, を添えて訳せば、

「つまりね、みんなに歩き回らせりゃ、わしの仕事が増えるって寸法でさぁ」

となります。

 

続いてのセリフ、

But indeed, sir, we make holiday to see Caesar and to rejoice in his triumph.

は、軽く否定して、本当のところは、

「ってのは冗談でして。本当のところはでがすがネ、シーザー様にお目にかかって、勝ち戦のお祝いを申し上げるために、仕事を休んで来たってことでございますょ」

と、自分たちの目的を言うのですが、シーザーの名前がでた途端に一気に物語が展開していきます。