106番です。

 

it is just that one never knows when one might be obliged to give out that one is from Darlington Hall, and it is important that one be attired at such times in a manner worthy of one's position.

 

just   公正な もっともな 当然の 正確な

oblige   を義務付ける 恩恵を施す 

give out   発表する 力尽きる

attire   装う 正装する

 

前の文はセミコロンで終わっていたため、この文は小文字で始まります。

ややこしい言い方です。まずは、分解してみます。

 

 

1  it is just

2         that one never knows

3                                 when one might be obliged to give out

4                                                                                    that one is from Darlington Hall,

5   and it is important

6         that one be attired at such times in a manner worthy of one's position.

 

同じパターンの文が and で接続されています。対句になっているのですね。

カズオ・イシグロは対句が大好きみたいです。

 

文法的には、it は形式主語、that 以下が真の主語です。

「that 以下(2行目~4行目)は、正当です」

「that 以下(6行目)は、重要です」

となります。

 

最初のthat 以下では、one が三回も出てきますが、すべて同じ人です。

ダーリントンの邸館から来た人」つまり、スチーブンス本人ですね。

 

2行目から4行目まで続けると、

「誰がダーリントンの邸館から来たということを、いつ何時、その人が言わなければならなくなるかを、その人は決して知らない」となります。

さらに1行目を加えれば、

「ということは、正しいことです」つまり「ということは、ありうることです」

 となります。

 

いつ素性を尋ねられるか分からない、けれどいつかは間違いなく尋ねられるから、という気分です。

 

で、そういう時に、何が重要かというと、ふさわしい身なりということになるわけです。

 

at such times は、まさしく、そういう時に、ということです。

one's position と言ってますが、単に地位だけではなく、それを含めた「人となり」ということですね。

 

「そういう時に、その人となりにふさわしい身なりをしていることは、大切なことでございます」

となりますね。