118番です。

 

It seemed in the end there was little else to do but actually to raise the matter again with Mr Farraday.

 

そんなに長い文ではありませんが、it から始まる主節と、there の節との関係、さらにその中の二つの不定詞 to do と to raise の関係が分かりにくいです。

まず、分解してみます。

 

① It seemed in the end

② (that) there was little else to do

③                  but actually

④                             to raise the matter again with Mr Farraday.

 

こんな感じになるでしょうか。②の there の前に、関係代名詞 that を補いました。こうすると、it が形式主語、補った that 以下が真主語の形になって、文法関係が明確になります。

 

seem は、不思議な動詞だと、日本人の私は思います。

It が、~のように見える、とか、思われる、と訳すわけですが、実は it が見ているのではなく、it は見られている方であって、本来なら受動態で書かれるのが自然ではないか、と思うわけです。

つまり、 It was seemed in the end .... ではないかと、思うのですが。

実は、このプロローグが、

It seems increasingly likely that I really will undertake the expedition ....

というスチーブンスの回想から始まっているのですが、これも文法的事情は同じです。

 

他にも、 look という動詞があります。

She looks so young. 

彼女は、若く見える、と訳すわけですが、彼女が見ているのではなく、見ているのは彼女以外の周りにいる人であって、彼女は見られている側です。見られているのに、受動態ではないのは、不思議ではありませんか。

 

この謎を解くカギは、seem や look は自動詞だということです。

自動詞とは、そういう状態で存在していると、いうことで、

seem なら、「そう思われる状態で存在している」で、

look なら、「そう見える状態で存在している」ということで、

見るとか、思われる、という能動的な動作を直接に表しているのではないのです。

さらに、そういう自動詞ゆえに、受動態は存在しないことになります。

 

ちなみに、④の matter は名詞ですが、

黒人の人権尊重のスローガンの

Black lives matter. 

の matter は、自動詞です。

「重要である、大切である、かけがいのないものである、」という意味で、そういう状態で存在している、という意味の自動詞なんです。

そして、この三語で、文として完結しています。文形としては、SVC になります。

Black lives が主語で、これが複数ですから、matter は変化せずにそのままの形ですが、black life という単数形なら、matters と三人称単数現在、三単現の s がつくことになります。

「黒人の生命は大切である」から「黒人の命も大切である」と too の意味も添えて、

というのが、BLMの意味ということになります。

スローガンとしては、

「黒人の生命も尊重しろ」⇒「白人以外の生命も尊重しろ」⇒「人種差別は許すな」

ということになるわけです。

 

いずれにせよ、自動詞というものに、もう少し注意しないといけない、ということになります。

 

さて、この文に戻ることにします。

① It seemed in the end

② (that) there was little else to do

③                  but actually

④                             to raise the matter again with Mr Farraday.

 

①は、It = that 以下となって、

「終わりには、that 以下は ~と思われました」とか「今となっては」

ですね。

 

②の little は、否定的に訳して、「~ない」としますから、

「ほかには、することがもうありません」ですが、「~だけが残っています」も考えられます。

 

③は、but は、except を除いて、の意味で使われています。

「現に~を除いては」

という感じでしょうか。

 

④の the matter 重要なこととは、「ガソリン代は持つよ」といったことが本心かを確かめるために、つまり、言質を取るために、そのことを蒸し返すということですが、言い出すタイミングに苦慮するというのは、よくわかります。

「ファラディ様にもう一度あの重要なことを申し上げる」

となります。

 

まとめると、

「今となっては、残っていることはファラディ様にもう一度あのことを確認するだけのように思えました」

となるでしょうか。