132番です。

 

That is to say, I did not take sufficient account of the fact that at that time of the day, what Mr Farraday enjoys is a conversation of a light-hearted, humorous sort.

 

分解するわけですが、三つのコンマに注意しなければいけないようです。

最初のものはともかく、後ろの二つは、それで挟まれた文が挿入されているわけで、その文を飛ばして考えなきゃいけないところです。が、それはそれで関係代名詞ですから絡んでいます。

いずれにせよ、文の構造を解明することが肝心です。

 

ということで、

 

① That is to say,

② I   did not take    sufficient account of the fact   

③       that

④                          at that time of the day

⑤      , what Mr Farraday enjoys

⑥                                                is a conversation of a light-hearted,

⑦                                                                            humorous sort.

 

こんな感じに分解できると思います。

 

①は、スチーブンスの口癖みたいなもので、「あー」とか「えー」でも済むものですが、文字通りに訳せば「それはこういうことです」です。「つまり」でいいかもしれません。

 

②の文が中心になる文ですが、②だけでは不十分で、実は⑦ humorous sort を含める必要があります。②と⑦で完全なSVOCの文型になります。

②は、格ごとにスペースを広めにとってあるので、その部分は見やすいと思いますが、もっと見やすいように、挿入部分の③④⑤⑥と、ついでに①を取り去ってみると、次のようになります。

 

② I   did not take    sufficient account of the fact   

⑦                                                                            humorous sort.

 

②と⑦がこの部分の本体でした。S主語は I で、V動詞 は did not take 、O目的語が sufficient account of the fact 、そしてC目的補語が⑦ humorous sort.というわけです。

 

と、なるのですが、その前に、注意すべきことが一つ。

account は、当然名詞ですが、その割には冠詞が見当たりません。ということは、

take account of  O  という形の熟語になっているようです。辞書を見ると、

take account of  O で、~に注意する、~に気づく、となっていて、

そのほかにも、take  O  into account  =  take into account  O  というのも出ています。

 

ということで、ここは

「私は、…の事実に十分に注意しなかった」

となります。

 

訳語はもっと練らなきゃなりませんが、その前に挿入部分の③④⑤⑥を解決しましょう。

 

③の that は関係代名詞で、先行詞は sufficient account of the fact の中のfactです。

で、どんな事実かというと、⑤⑥になります。

⑤は、「ファラディさんが楽しんでいることは」となります。what は先行詞を含む関係代名詞で、ここでは主語になっています。

その主語部分に対する動詞部分が、⑥ is a conversation of a light-hearted になっています。 light-hearted な会話 をどう訳すかが問題ですが、文の構造は解明できたようです。

 

残りの③は、副詞句で、その日のあの時に、ということですから、お茶を持って行った時、ですね。

その時、ファラディさんはどんな状態にあるかといえば、散歩から帰って、執務室にこもって、書類に目を通したり、書き物をしたり、それなりに神経を使う作業に従事しているわけです。

そんな時に休憩のお茶の時間となれば、どんなことがしたくなるのか、使用人であるスチーブンスは考えなきゃいけないのですが、スチーブンスはまだダーリントン卿時代の執事の癖が抜けきっていないようなのですね。

 

文の構造も、その時のスチーブンスとファラディさんの状況も分かったところで、訳語を考えます。

 

悩ましいのは、

A   conversation of a light-hearted

B   humorous sort 

  の二つですね。

 

A は、heart という動詞の意味がポイントです。辞書を見ると、元気づく、心にとめる、を気に入る、好きになる、などが出ていますが、心にとめる、がよさそうです。

それが light で、heavy ではないのですから、「軽く心にとめる」から「軽く配慮する」、そして「遠慮のない」、あるいは「本音の」あたりまで、意味を広げてもいいかもしれません。

「遠慮のない会話」とか、「本音のおしゃべり」ですね。

 

B は、sort は種類、ですが、そこで終わりなのではなく、次に conversation あたりが省略されていると考えると分かりやすいと思います。そういう種類の会話、そか、そういう種類の時間、ひと時ということです。

humorous というのは、機知に富んだ、とか、ユーモアのあるですが、〈遠慮なく、冗談を言い合って、盛り上がっている〉そういう肩の凝らない、あるいは、凝った肩をほぐす、という感じではないかな、と思います。

sufficient は、十分な、ですが、そこまで、あたりがいいように思います。

 

さて、前の文は、予期しないことが起こったとすれば、前提条件の読み間違いによるものだ、というスチーブンスの一般論でした。

それを踏まえて、この文は

「つまり、そのときにファラディ様がお望みになっていらっしゃることは遠慮のないおしゃべりをすることが、肩をほぐすひと時になるということに、私はそこまで注意しませんでした」

となりました。