135番です。

 

So it was that in indicating my reasons for preferring the West country for my mortering, instead of leaving it at mentioning several of the alluring details as convoyed by Mrs Symons's volume, I made the error of declaring that a former housekeeper of Darington Hall was resident in that region.

 

長い文です。分解してみます。

 

① So it was that

②           in indicating my reasons

③                                for preferring the West country for my mortering,

④           instead of leaving it

⑤                                at mentioning several of the alluring details

⑥                                              as convoyed by Mrs Symons's volume,

⑦ I made the error of declaring that

⑧            a former housekeeper of Darington Hall was resident

⑨                                                                                in that region.

 

こんなに細かく分ける必要はないと思います。

このブログの横幅の関係で、思いもかけず細かくなってしまったということです。

 

思いもかけない理由で、思いもかけない方向に話がそれてしまうということは、まあ、ありうることです。スチーブンスも、そういう状況になってしまったようで・・・

 

①は、もうお馴染みで、あんまり気にする必要のない文ですね。スチーブンスの口癖というもので、話の展開には関係はないところです。

文法的には、仮主語 it が、真主語 that 以下文末まで、つまり、②から⑨までを指すと考えればいい、ということになります。

 

②は、「理由を示すにあたって」「理由を言うときに」となる前置詞句です。in は、時を表しています。

前置詞 in は、at でもよさそうですが、カズオ・イシグロは in indicating と、わざと in を重ねたかったのかもしれません。

接続詞 when を使って書き換えることもできそうです。その場合は when I indicated my reasons となります。

 

③は、for の前置詞句ですが、理由的なことを述べるときに使います。~のために、としておけばよさそうです。後ろにもう一度 for が使われていますが、同じ前置詞を使って、つまり、音を揃えているのは、②の in のケースと同じで、その面白さを狙っているのかもしれません。because of とか、単に of とか、候補は実はいくらでもあるのですから。

 

さて、④はわかりにくいですね。

まず、it は何でしょうか。

それに、leave という他動詞が分かりにくい動詞です。

去る、離れる、置いて立ち去る、残す、などが辞書には出ているのですが。何かの結果を残して、それをした人はもうそこにはいなくなっている、という感じが分かりにくいように思います。残して去る、ということなのでしょうが、残す、と、去る、という二つの動作が一語になってしまっているというのが、どうもなじめないところです。

ちなみに、自動詞としては、出発する、旅立つ、去る、卒業する、辞職する、などがあります。

ここでは、it という目的語があるので、leave は他動詞として考えて間違いがないところです。

直訳すれば「それをそのままにしておくかわりに」「それを残して去らないで」となるのですが。

it が何か、が分からないと進みません。といっても、it に対応する単数のものが見当たらないのですね。

 my reasons 、several 、the alluring details は、どれも複数だから、受けるとすれば them となるはずで、これらは該当しないことになります。

単数で受けることができそうなものは、すぐつぎの mentioning か、前の preferring か、もっと後ろの  declaring も考えられます。

状況を考えると、スチーブンスが言うべきことの代わりに言わなくてもいいことを言ってしまって、それが大失敗だったと後悔する場面なわけで、mentioning と考えるのが順当です。

つまり、単純にサイモンズ夫人の一連の著作での描写が良かったといっておけばよかったのに、別のことを言ってしまってえらい目にあった、という状況を書いているところですから、⑥から始めて、

「サイモンズ夫人の一連の著作で取り上げられているように、魅力的な所が数多くありますといっておけばよかったところで、それを言って(相手の心に印象を)残すかわりに」

と leave (leaving) を使った気持ちを込めればいいと思います。

 

実際は、そう言う代わりに別のことを言ってしまっており、それが大失敗となり、その反省で、冗談に対する対策の必要性に話が広がっていくのですが・・・

 

⑦⑧⑨は、その大失敗の説明です。

「その地域には、以前ダーリントンの邸館で働いていたものが住んでいると、話してしまうという失敗をした」

ですね。

 

さて、まとめれば、

「そういうわけでございまして、どうしてその地方を選んだかということでございますが、サイモンズ夫人のその地方の描写が素晴らしかったからとでも言っておけばよかったのですが、その地方にはダーリントンの邸館で働いていたものが住んでおりますと口走ってしまうという大失敗を犯してしまったのでございます」

となります。