148番です。

 

'I'd never have figured you for such a lady's man, Stevens,' he went on.

 

figure  考える ~だと思う 描く

ladies man  女好きの男 女たらし

 

クオテーションマークで囲まれています。ファラディさんの発言ですね。

 

I'd は、辞書を見ると、 I should , I would , I had  の縮約形と出ています。

このところは、過去の思い出の話をスチーブンスがしているのですから、その時点で、ファラディさんが既に考えていたわけで、過去の時点で過去だったことを表す I had が適していると思います。

「おまえが女好きとは思っていなかったよ」

くらいですね。

前の二つ should , would でも間違いではないと思いますが、それだとすれば、意志が感じられるような訳になりそうで、

「わしは、お前がそこまで女好きとは思ってもみなかったよ」

となるでしょうか。

といっても、縮約されて正確なところが分からないわけで、この場面にどれがふさわしいか、が考えどころです。

 

もうひとつ、Stevens がファラディさんのセリフの最後にありますが、これの方が重要です。

一般的に、「スチーブンスさんよ」と、呼びかけとして訳されることが多いと思いますが、私は、これを「敬関詞」と考えています。

敬関詞とは、話し手と聞き手の間の「敬意と関係」を表現している言葉で、

この両者がその言葉に応じた関係であり、さらに、その間柄にふさわしい程度の敬意の意識がある

ことを表している言葉と考えています。

mister  であれば、相手が mister であるとの認識があり、そうならば、それに見合った敬意を表す言葉、つまり「~でございます」を使おうというわけです。「紳士さんよ」と呼びかけても、日本語としては不適格と思うのですが。

つまり、敬関詞は、それをそのまま訳すのではなく、そういう関係にあることを言葉遣いの上で表すのがいいのではないかと思うわけです。

 

というところで、

「そこまで女好きとは思いもしなかったよ」と、お続けになられました。

としました。

 

Stevens という単語は、直接「スチーブンス」と訳すのではなく、しなかったよ、という言葉の中に、そういう関係なら使うであろう言葉にして、意味とか雰囲気を表現したわけですが、学校では教えないというか、考えてもいないことなので、真意を伝えにくいです。