193番です。
In fact, I decided it best to call a halt to the matter and, pretending to remember something I had urgently to attend to, excused myself, leaving my employer looking rather bemused.
ややこしい文のように見えますが。分解します。
① In fact,
② I decided it best to call a halt to the matter
③ and,
④ pretending to remember something
⑤ I had urgently to attend to
⑥ , excused myself,
⑦ leaving my employer looking rather bemused.
こんな感じに分解できます。時間の経過に応じて、状況が変わっていくのですね。
and は同時に起こっていることを指しているのではなくて、その後に起きることを言ってるのです。「それから」あたりですね。
まず今の状況は、スチーブンスがやっと思いついた冗談を言ったのですが、ファラディさんには通じず、もう一度言ってくれと頼まれた瞬間に、この冗談が通じないばかりか、解説しても意味がないし、その言い方も分からないことが分かって、退散するに限るなと意を決している、というところです。
こんなややこしいことを、カズオ・イシグロはうまく書いてるものですと感心してしまいますが。
さて、①は、冗談を解説してもしょうがないと思った、その時の気持ちを表している言葉ですね。「実際問題として」という気分でしょうか。タメぐちなら「だからー」という感じですね。
②は、SVOCの文型で、Oの真の目的語は to 以下で、to call の方です。
to call a halt は、停止を呼ぶ、ですから、停止に来てもらう、という感じでしょうか。そこから、停止にする となるのでしょうか。to the matter が続くと、問題の所へ停止に来てもらう ということで、問題を棚上げする あたりになりそうです。
③の and は、そのあとで という感じです。何かが起きて、それと同時に、ではなくて、その後で と時間がたっていくわけです。
④は分詞構文です。副詞の働きで次の⑤の had urgently to を修飾します。「何かを思い出したふりをして」ですね。
⑤は本体の文です。 had to の間に、副詞 urgently がはまり込んでいますが、have to ねばならない の過去形です。「急いで向かわなければならなかった」となります。
⑥は挿入句ですが、言い訳ですね。「失礼して」です。
⑦も分詞構文です。副詞の働きで、今度は attend の方にかかっていきます。「ご主人様を残して」となります。
looking rather bemused も分詞構文です。今度は形容詞用法で、my employer という名詞にかかっています。「どちらかというと当惑しているようにみえる」 ご主人様を残して となります。
ということで、まとめて、
「 結局、このことは棚上げする方が最善と考え、申し訳ないとは思いましたが、何かを思い出しふりをして、ご主人様の当惑をそのままに 急いで部屋をあとにしました」
としておきます。