1-27です。

 

For a moment, I took him for a vagrant, but then I saw he was just some local fellow enjoying the fresh air and summer sunshine, and saw no reason not to comply.

 

岩の上に座って煙草を吸っているというのは、そもそも暇なわけですね。昼間っから暇な人には用心したくなるのは、まあ自然です。こんな場面での、一文ということです。

 

ということで、今回はちょっと長めの文です。とりあえず分解をします。

 

① For a moment, I took him for a vagrant,

② but then I saw he was just some local fellow

③ enjoying the fresh air and summer sunshine,

④ and saw no reason not to comply.

 

①の for a moment は、その人を見た瞬間は、ということなので、「最初は」あたりが日本語っぽいと思います。つまり、

「最初は浮浪者かと思いました」

という感じでしょうか。

 

②は、でも、すぐに、違うと思いなおしたという気持ちの変化の時間的な経過を表しているので、

「でも、すぐに、この近くに住んでいる人なんだと分かった」

ということになりますね。

 

で、③はその人がしている様子です。

「新鮮な空気と初夏の陽差しを楽しんでいる」

わけです。

英語は後ろに修飾する言葉を付け足していくのが順序ですね。日本語は、前から並べておくのが順序です。この順序の違いを工夫するところが訳の面白さだと思っています。

 

ここまでをまとめれば、

「最初は浮浪者かと思いましたが、すぐにこの近くに住んでいる人が新鮮な空気と初夏の日差しを楽しんでいると分かりました」

となります。

 

そういう風にスチーブンスは思っていて、④と続きます。

to comply という不定詞を否定するには、すぐ前に not を置けばいいので、「応じない、近づかない」となり、それが reason にかかっていき、その reason が no で否定されています。二重に否定されて結局は肯定されて、つまりは強調されていることになります。

「応じない理由はないと判断した」

ということですから、

「ということであれば、近づいても害はなかろうと判断いたしました」

ですね。

害はないどころか、このあたりの地理とか道の具合など必要な情報が得られるかもしれないわけで、無視することはありません。むしろ、もっと早く近づくべきでしたね。

「ということであれば、近づかない理由はないじゃないかと思いました」

と、直訳っぽい方がいいかもしれません。

 

全部まとめれば、

「最初は浮浪者かと思いましたが、すぐに近くの住人が新鮮な空気と初夏の陽光を楽しんでいるのだと分かり、それならば、近づかない理由はないじゃないかと思いました」

となりますね。今回はスムーズな訳だと思います。