1-56です。
Here one was met by a bench - and indeed, by a most marvellous view over miles of the surrounding countryside.
受動態です。が、教科書的な受け身というやつではないですね。カズオ・イシグロのセンスはさすがです。
受動態の文が二つあります。分解してみます。
① Here one was met by a bench
② - and indeed, by a most marvellous view
③ over miles of the surrounding countryside.
こんな感じに分解できるでしょうか。③は view を形容している前置詞句です。分ける必要はなさそうですが、①②の受動態の構文が際立つと思い分解しました。
①は、「ここで人は誰でもベンチに出迎えられる」という受け身の文です。one が主語で、was met されるわけですね、by a bench ベンチによって、です。
つまり、ベンチがあるのが目に入る、ということです。
しかも、そのベンチは何の形容もありません。おそらく、木製の古びた、座るのも考えてしまうようなベンチだと思うのですが、カズオ・イシグロは一切形容していません。
「ベンチが一つ、目に入りました」
それに対して、②は同じ形の受動態の文ですが、Here one was met は省略していますが、and indeed で受けています。indeed は、次に出てくる景色のすばらしさをさりげなく強調しています。
ハイフンもそういうことに一役買っていると思うのですが、このハイフンはなくても意味は通じます。ただ、ベンチという物と、景色というモノではない物を対比させているぞという作者の気持ちの表れと考えると納得できますね。
a most marvellous view によって、one が見られるという受け身なわけですが、bench は一言だったのに対し、view の方はしっかり言葉が尽くされています。その対照も注意事項でしょうか。
「そしてその向こうに、どこまでも穏やかに豊かに田園風景がひろがっているのが、目に入りました」
ということで、合わせれば
「ベンチが一つ目に入りました。さらにその向こうには、どこまでも穏やかに豊かに田園風景がひろがっているのが、目に入ってきたのでございます」
となります。