1ー61です。

 

It was a fine feeling indeed to be standing up there like that, with the sound of summer all around one and a light breeze on one's face.

 

ちょっと長い文になりました。俳句っぽいきれいな文です。

分解というか、構造を見ていきましょう。

 

① It was a fine feeling indeed

② to be standing up there like that,

③   with the sound of summer all around one

④   and a light breeze on one's face.

 

分解すると、こんな構造がはっきりします。

 

①は、仮主語 It のSVCの文型です。

それに対応する真主語は②の to be standing です。終わりの所にある that は、今スチーブンスがしていること全体を指しています。

「そのように、そこに立っていることは、本当に気持ちのよいことでした」

です。

つまり、かなりしんどい思いをして上まで上がってきて、ベンチのあるところで遠くまで見晴らして立っていることは、きっと汗が噴き出しているでしょうし、木々に囲まれた中で風が吹いてくれば、ほんとに気持ちがいいと想像できます。

 

というような状況を説明しているのが、③と④です。

前置詞の with で状況を説明しています。

 

③の one は、「人」のことで、一般的な人になっていますが、スチーブンス自身のことです。with は、そういう環境の中に、ということです。

「私の周りをぐるっと取り囲む夏の音のなかに」

ということですが、音がする中での静けさを感じます。蝉も鳴いているのでしょうね。カズオ・イシグロ芭蕉を当然知っているはずです。

the sound の the は、おなじみの夏の音という感じがします。

 

つぎの④での、one's face の one も同じく「人」ですが、やはりスチーブンスと考えていいですね。

「私の顔の上には軽い風が」

となるでしょう。

こちらは a light breeze となっていて、千の風の内の一つという感じがします。そういう働きを感じさせるのが、 a です。千の風の方は、カズオ・イシグロは多分知らないと思うのですが。

 

ということで、まとめると

「そのように、上がってきて遠くを見やっていると、そよぐ夏の音と軽い頬の風に包まれて、本当に気持ちがいいことでございました」

とします。