1-64です。
And indeed, it was then that I felt a new resolve not to be daunted in respect to the one professional task I have entrusted myself with on this trip, that is to say, regarding Miss Kenton and our present staffing problem.
daunt を威圧する
長いですね、スチーブンスらしいと思う文です。分解してみます。
① And indeed,
② it was then that
③ I felt a new resolve not to be daunted
④ in respect to the one professional task
⑤ I have entrusted myself with on this trip,
⑥ that is to say,
⑦ regarding Miss Kenton and our present staffing problem.
こんな風に分解してみました。
まず、スチーブンスがこの旅に出たいきさつをここで整理しておきましょう。
ダーリントンの邸館は、時代が変わり以前のような役割を果す華やかなところではなくなり、持ち主も変わりました。スチーブンスは残って運営に当たっているのですが、スタッフの職務遂行能力はギリギリな状態です。そこで思い出したのが、以前一緒に働いていたケントンさんの存在です。彼女なら仕事のことは知り尽くしているし、この窮状を救ってくれるように説得してみようと、ファラディさんがアメリカに帰っている休暇を利用して自動車旅行に出発したのでした。それとは別に、冗談を使いこなすという目標もあるのですが。
出発したものの、走っているルートに自信が持てなくなり、いったん止まる羽目になります。そのときに、そこに居合わせた住民に勧められて小高い山に登り、雄大で落ち着いた景色を眺めていると、失われていた自身が戻ってくるようだと、感じているのが、大体このあたりの場面です。
まあ、自信喪失のスチーブンスは何とか自信を回復しつつあるようです。
⓵ And indeed, は、「そして、確かに」ですが、この後の訳を考慮して適合する訳語を考えればいいです。
②で、出てきました。もうお馴染みになった it was then that です。then が名詞と分かれば、これだけでSVC+that の文型で、S = that 以下 ということが受け入れられますね。
③は、「威圧されたのではない新しい解決だと私が感じたこと」です。
not は不定詞を否定するものです。この不定詞は受動態になっており、それが
resolve にかかっているのですが、威圧されたのではない、ということの意味が重要ですね。強制される、とか、やむを得ず、そうせざるを得ないといった感じの、否定です。自然に、素直に、ということでしょうか。
④は、解決する問題がどこにあるのかという場所を説明しています。respect は敬意、重要性みたいなことでしょうか。
それが the one professional task 「一つの職業的な課題」に対して、に対する、ものですね。
③④をまとめれば「業務上のある重要な問題の新しい解決法だと感じた」という感じでしょうか。
⑤の entrust myself は、自分自身に任せる、のですから、解決策を見つける、ということです。
⑦が解決する問題ですが、その前に⑥が入っていますが、スチーブンスの口癖ですね。
「つまりは、ケントンさんと我々の従業員の業務割り振り問題にかかわる」となります。
全体の訳をまとめるのは、後ろから訳を積み重ねてくればよさそうです。
というところで、
「私が今度の旅に出て解決しようとする、つまりは 私たちの従業員業務割り振りとケントンさんに関する この旅に時分自身に課した 使命の重要性から 解き放たれるような 思いがしたのでございます」
としておきます。
あくせく考えるのはやめようということでしょうか。
どんな心情かをうまく表すような日本語が求められますし、カズオ・イシグロが繰り返したパターンを生かす工夫も必要です。さて・・・