171番です。
Yet it is my firm conviction that at the peak of his career at Loughborough House, my father was indeed the embodiment of 'dignity'.
スチーブンスが、父が生きていたころの話題を、思い出しながら話しているという場面です。そのため言葉の順番が前後している感じがします。カズオ・イシグロの人物の性格の設定が優れているのだと思います。リアリティが増しますね。
ということで、普通の話す順に書き直してみることにします。
Yet it is my firm conviction that my father was indeed the embodiment of 'dignity' at the peak of his career at Loughborough House.
と、書き直せると思います。
It that の仮主語、真主語構文です。
これなら、頭から順に訳してくればよさそうです。
「しかしながら、ラフボロ―館時代の父はその生涯で最も充実していたころで、この「品格」のまさしく体現者であったと、私は強く信じています」
となります。
しかし、この原文だと、自身の父ながら敬意を払い、執事として目標としていることを感じさせる力がなくなってしまっているように思います。カズオ・イシグロの原文はやはり力がありますね。
ということで、そういう力を感じさせるように訳すべきだろうと思います。
「しかし、私は確信しているのですが、ラフボロ―館時代の父はもっとも脂がのっていたころで、この「品格」というもののまさしく体現者でした」
うまくいってるかどうか。