182番です。

 

In one regrettable case, which I myself witnessed, it had become an established sport in the house for guests to ring for the butler and put to him random questions of the order, say, who had won the Darby in such and such year, rather as one might to a Memory Man at the music hall.

 

長い文です。落ち着いて分解することにします。

 

① In one regrettable case,

② which I myself witnessed,

③ it had become an established sport in the house for guests

④ to ring for the butler

⑤ and put to him random questions of the order,

⑥ say, who had won the Darby in such and such year,

⑦ rather as one might to a Memory Man at the music hall.

 

こんな感じに分解しました。それぞれはそんなに長くありません。つまり、見かけほど複雑ではないと考えられます。付け加えてことなどを挿入した結果、文が長くなったようですね。

 

①から訳していけばよさそうです。one は、181番の文で「多くの例を耳にしている」と言っていましたが、そのうちの一つ、という感じです。

「ある残念な出来事がありました」

で、良さそうです。

 

で、こんどのこれは、聞いたのではなく、自身が実際に目にしたした case だと確認するのが②です。which は関係代名詞で、先行詞は①の case です。

「私自身が目にしたことですが」

です。

今までは、聞いていること、だったのですが、今度は、実際に自身が見てしまったのだと、スチーブンスの無念さを表現しています。

 

③は、it は仮主語です。真主語は、今回は不定詞です。④と⑤の二つの不定詞が真主語です。とりあえず訳してみると、

「そのお屋敷では、お客様に向けた 確立された余興に なって おりました」

です。

 

主語の一つ④ to ring は、不定詞ですが、もとは動詞 ring ですから、この動作をする主体があるはずで、それが「意味上の主語」すなわち③の最後の for guests です。

「(お客様が)執事を呼びつけて」

となります。

もう一つ⑤ put ですが、等位接続詞 and で結ばれています。本来ならば、to put と不定詞の形になっているべきですが、続く to him にも前置詞 to が重なるので省略したと考えられます。

order は、レストランなどでの「オーダー」つまり注文ですから、お客の希望、と考えれば、「ご希望の」あたりがよく、

「(お客が)ご希望の 任意の 質問を 彼に 投げかける」

となりますが、「いきあたりばったり」とか、質問が執事の不意を突いている感じが薄くなるのが残念です。

「ご注文の質問を何でも投げかけて」

ということです。

 

⑥は、その一つの例をあげて、say は、「言うならば」で「例えば」ですが、

「例えば、これこれの年のダービーで勝ったのはだれか」

とか、となります。

 

そんなことは、執事のすることじゃなく、まるで・・じゃないかということで⑦の文になります。

この部分は、might という仮定法を表す助動詞はあるのですが、動詞は省かれています。be とか become あたりを might と to の間に補ってみると分かりやすくなります。怒っているスチーブンスの気持を表しているようです。仮定法を使って、動詞を省略して、そういう怒りを表していると考えられます。

そういう風に思っているわけですね。

「あたかもまるで 見世物小屋にいる 記憶男 になっている ように」

と訳せます。

余興として、お屋敷の恒例なっていることは事実で、スチーブンスもちゃんと見たことなのですが、記憶男云々はスチーブンスの想像ですから、仮定法になっているわけです。

 

というところでまとめると、

「ある残念な出来事がありました。私が実際に見たことですが、あるお屋敷では、お客を喜ばす恒例の行事になっていて、執事を呼びつけて、好きな質問を、例えば、これこれの年のダービーで勝ったのは誰か、などを答えさせていたのですが、そんなことは見世物小屋で記憶男がやることではないでしょうか」

としました。