239番です。

 

My father did not reply, but continued to stand there silently, neither demanding disembarkation nor offering any clue as to his desires or intentions.

 

今回はそれなりの長さの文です。

このところカズオ・イシグロは、前置詞句などを使って、主人公の行動や動作の描写をおぎなうことが多くなっています。

今回は、demanding と offering という動名詞を使い、neither   nor  という定型で表現しています。

demanding と offering が、なぜ動名詞かということに関して、その理由は名詞であれば、一つの文の中でいくでも使うことができるし、又それを使う場所も自由だからです。現在分詞=形容詞と考えると、使う場所を限定されてしまうからです。

 

とりあえず分解してみます。

① My father did not reply, but continued to stand there silently,

⓶ neither demanding disembarkation

③ nor offering any clue as to his desires or intentions.

 

⓶と③は、neither   nor  の熟語で、離さない方がいいかもしれません。一行にすると語数が多いので、妙なところでころで行がかわってしまうので⓶と③に分けました。

 

①は、

「私の父は答えませんでしたが、そこに黙って立ちつづけました」

です。

何も言わないというのが不気味です。何か後ろめたいところがあれば特に震え上がってしまいます。

 

⓶と③は、二つの動名詞が、副詞的に使われて、スチーブンスの父の様子を描写しています。黙っているのですから、これはチャールズ様の想像なのですが、動名詞なので時制は考えなくてもよいのですね。まとめて訳すと、

「降りてくれともいいませんし、なにかするとかしないとかの糸口さえ分かりませんでした」

となります。

 

というところで、

「私の父は、それには答えず、黙ってそこに立ちつづけました。降りてくれともいいませんし、なにかするとかしないとかの糸口さえ分かりませんでした」

としました。