50番になります。

 

It was on that occasion - in the strangely bare study of Darlington Hall - that Mr Farraday shook my hands for the first time, but by then we were hardly strangers to each other.

 

この程度の長さと挿入にはもう慣れました。スチーブンスの口癖に慣れてきたわけですね。

 

それでは、分解して並び替えてみます。と言うほどではありませんが。

 

1  It was on that occasion

2                   - in the strangely bare study of Darlington Hall -

3  that Mr Farraday shook my hands for the first time,

4                                                but by then we were hardly strangers to each other.

 

やはり、構造がはっきりします。

文の本体は、1行目と3行目ですね。It は形式主語、3行目のthat 以下が真の主語ですが、ここでは、「それはこんな状況でした」と、ここで書いてある順に訳して、気を持たせた方がよさそうです。

そこに、2行目のハイフンで囲まれた文が、that occasion を際立たせていて、

4行目で、初めての印象を詠嘆しているわけです。

 

で、さっそく、

「それは、こんな状態でございました。あのダーリントンの邸館の、一切の飾り気のない殺風景な部屋で、ファラディ様は初めて私の手を取られたのでございます。その時まではお互いに、こんなことになるとは思ってもみない全くの他人であったのでございます」

としましたが、もっといい訳がありそうに思います。

 

かつて、きらびやかなダーリントンの邸館には、世界中の名士が集い政治の表舞台では見せない本音の交流が行われていたと思います。そういう古い政治の手法が通用しなくなり、そんな現場を担ってきたスチーブンスたちの居場所も狭くなってきたことを敏感に察知している人もいるのですが、さて当の本人はどうでしょうか。