157番です。

 

For instance, I once had occasion to ask him, if a certain gentleman expected at the house was likely to be accompanied by his wife.

 

前の文ではスチーブンスは、ご主人がおっしゃったことで驚かされたことは一度や二度ではない、と言っていました。

この文は、どう驚かされたのかという例なわけです。

まず、分解してみます。

 

① For instance,

② I once had occasion to ask him,

③       if a certain gentleman expected at the house

                      was likely to be accompanied by his wife.

 

①は副詞句です。全体にかかっており、「例えば」となるのですが、実際には、この文だけではなく、次の文にも及んでいると考えた方がよさそうです。

②が、この文の中心で、主節です。「あるときご主人様にお尋ねしたことがございます」です。直訳すれば、「かつて彼に聞く機会があった」です。

 

そこで、そのお尋ねしたことが、③という if 節になっています。ブログ幅の関係で二行になっていますが、②の主節の目的語(つまり目的節)として働いています。したがって、if は関係代名詞 that の代わりと考えた方がいいですね。

the house は、ダーリントンの邸館のことです。expected は過去分詞で、後ろから gentleman にかかっています。

「この邸館に(お泊りを)お望みの、ある紳士が」となり、つまり③の if 節の主語部分です。

 次の行は、その主語部分に対する動詞と補語部分ということになり、

「奥様をご一緒なさりたいと望んでおられる」

となります。

日本語は、関係を表す言語です。主人のファラディさんと執事のスチーブンスとの関係、更に、そのスチーブンスとお客様の関係を、適切な敬語で表すと自然な日本語になると考えています。

こういう日本語の原理については、もっと議論の必要があると考えています。

 

というところで、まとめて

 「例えばこんなことがございました。お客様が奥様をご一緒したいとお望みでございますがと、お尋ねしたところ」

と次の文に続けるような訳にしたのですが、次の文次第で変えた方がいいかもしれません。