13番の文です。
I recall thanking him for his consideration, but quite probably I said nothing very definite for my employer went on:
コロンで終わっています。内容は次の文に続くのですが、文法上の構造的には、ここまでが一つの文になっています。
実際は二つの文が but でつながれています。
この but は、新自修英文典では「文法上対等の位置を持つ語、句、節などを接続するものを、等位接続詞という」と説明されており、さらにそれを四つに分類しています。
その四つは、連結接続詞、選択接続詞、反意接続詞、因由接続詞、ですが、三番目のものにあたりそうですが、これは訳し方次第だと思います。
いずれにせよ、文法的な重みが同じものをつなぐということです。
なお、文法的に重みが異なるものは従属関係があるわけで、そういうものは従属接続詞と呼ばれるようです。
接続詞について結果をまとめると、
等位接続詞 従属接続詞
連結 選択 反意 因由 従属節をつくるもの
となります。まあ、どうでもいい感じですね。
recall は、思い出す、思い起こす、呼び戻す、ですが、
consideration は、どう訳しましょうか。辞書を見ると、
よく考えること、考慮、配慮、思いやり、考え、意見 尊重、などとなっています。
使用人から見たトップの考慮は、思いやりや意見というより、命令に近いものだろうと考えますが、配慮ならば無難かなと思います。
「私は、配慮に感謝したことを覚えている」を、but でつないで、
次の文、
「はっきり返事をしないうちに」
さらに、ファラディさんに言われた感じで、
「ご主人さまはお続けになられました」
となります。
と、いちいち英単語を日本語に置き換えても、それが正しい訳とは言えないのは、
"Good morning!" を、「良い朝ぁーー!」とは Ai でもやらないことを考えれば、分かります。
要するに、執事が自分でも不向きな、仕事とも言えない作業をやっているときに、また主人の方でも、主人らしくない、つまり主人業に慣れていない感じで、本を抱えて部屋に入ってきた主人が、慌てて主人らしく、鷹揚な感じで、椅子に体を伸ばし、足を投げ出して、使用人が脚立から下りてくるのを待ちきれずに、故国へ帰ることを決めたことなどの自分の思い付きを言う場面です。どっちも、おっかなびっくりで、たどたどしくやりとりをしているところでしょうか。
で、
「とりあえずお礼だけは申し上げましたが、ご主人さまのお話については、行くかどうかはっきりとしたご返事を差し上げなかったと覚えております」
と訳すことにします。もっと、ばたばたした感じを出してもいいかもしれません。