17番の文に行きます。

 

indeed, it seems to be something which genuinely troubles him.

     genuinely  純粋に 真に 本当に 心から

 

セミコロンでつながっている文ですから、補足したり、注釈を付けたりという目的です。indeed は、そういう気持ちに沿った訳語を考えるべきと考えます。

 

さて、seem ですが、look とおなじように、不思議な言葉です。「見える」のですが。

いやいや、日本語の「見える」も不思議な言葉です。ほかの言語でも、同じことが起こっているかもしれません。

 

例えば、

  あなたは、若く見える。

  あなたは、私が見える。

を考えると、主語と動詞はどちらも同じ「あなた」と「見える」ですが、上の文では、見ているのは、「あなた」ではないのに、下の文では、見ているのは、間違いなく「あなた」です。しかも、特にそれが理由で混乱が起きているようにも感じないし、むしろ、こうやってほじくりかえす方が異常と思えるようなことかもしれません。

 

ともかく、seem も look も、その不思議さはここでは気にせずに、進みます。

「のように思われる」「のように見える」と辞書には出てきます。

 

which は、関係代名詞です。先行詞は something ですから、

「彼を真に悩ませるところの何か」

という直訳になります。

 

「たしかに、それは彼を真に悩ませていたもののようでした」

となるので、もう少し日本語らしくして、

 

「常々、不思議に思っておられたことのようです」 とか、

「常々、気にかけておいでになられたようです」 とか、

にしましたが。

「ことの」を入れれば something の感じが、「おいでに」を使えば、genuinely の感じがより出るかもしれません。