1-81です。
The wide, airy nature of the streets here give the city a marvellously spacious feel, so that I found it most easy to spend some hours just strolling in the gently warm sunshine.
名文ですね。カズオ・イシグロのセンスが光る文です。どういうセンスかというと、一つは、品詞をよくある使い方で使わない、ということがあると思います。
例えば、この文での wide です。一般的には、形容詞で使われることが多いと思うのですが、ここでは名詞で使われています。
文法書には、the + 形容詞 という形で、特別に一つの項目をたてて解説しています。
抽象的に物事を表すとか、そういう人、などを表すと書いてあるのですが、逆に言うと、それだけ通常にはない、一風変わった使い方だよと注意を促しています。
つまり、読者は新鮮に感じるというわけで、作者の思うつぼとなりますね。
airy から here までは、その the wide と同格にして、説明を補っています。
ということで、分解をしてみます。
⓵ The wide,
② airy nature of the streets here
③ give the city a marvellously spacious feel,
④ so that I found it most easy
⑤ to spend some hours just strolling in the gently warm sunshine.
と、こんな感じに分けてみました。
⓵は名詞で、主語になっていて動詞は③の give で、①③でSVOOの文型になっています。
②は、①の the wide と同格で、ここでは⓵のせいで、②となっていると説明されています。
あわせて直訳すれば、
「広さというものが、つまりどこの通りも道幅が広くて、風が通りやすいことが、町全体に 息を詰まらせない開放的な 気持ちを 与えている」
となりそうです。
④のthat は関代ですね。先行詞が①のthe wide です。コンマで区切ってあるので、ところの というように後ろから訳さず、前から、だからというような、いわゆる継続用法で訳した方が滑らかに行くようです。
「それだから、私は、それが、もっとも 楽なのに 気がついた」
となるのですが、
it は形式目的語で、真の目的語は⑤となり、
「ややあたたかい日差しの中を 散歩して 何時間も費やす ことも」
ととりあえず訳しといて、目的語を連結すればいいことになります。
「それだから、日差しはややあったかくいつまで歩いていても気持ちが良かった」
というところで、まとめると、
「どこの通りも広々としていて、風が通り抜けて息苦しくなく、そのせいでしょう、日差しはややあつかったものの、どれだけ歩いてもいい気持ちでございました」
としました。