151番です。

 

  Naturally, I felt the temptation to deny immediately and unambiguously such motivations as my employer was imputing to me, but saw in time that to do so would be to rise to Mr Farraday's bait, and the situation would only become increasingly embarrassing.

 

気持ちというか思惑にずれが生じたときは、こういうことになるということでしょうね。

長い文ですが、構造はそんなに複雑ではないようです。さっそく分解してみます。

 

①  Naturally, I felt the temptation to deny

②                          immediately and unambiguously

③                                                               such motivations

④                                             as my employer was imputing to me,

⑤              but saw in time    that to do so

⑥                                          would be to rise to Mr Farraday's bait,

⑦ and the situation would only become increasingly embarrassing.

 

こんな具合でしょうか。

文の基本構造は、つぎのようになっています。

①と⑤で、I 私(スチーブンス)が felt したと同時に saw したのですが、それらは逆説の接続詞 but でつながれています。

そういう現象的には何の動きもなく、時間だけが過ぎていくあいだに、and でつながった⑦が続きます。

動揺というか、気まずさだけが膨らんでいくにもかかわらず、それに対して手の打ちようがないという状況ですね。

スヌーピーの漫画なら、絵のどこかに sigh が出ている感じでしょうか。

 

さて、①②③はSVO の文型で、to deny 不定詞は後ろから the temptation にかかっています。形容詞用法とでもいうんでしょうね。

動詞としての deny の目的語が、such motivations というわけです。

そして、その否定の様子が  ② immediately and unambiguouslyという二つの副詞で表現されています。

というところで訳せば、

「自然に、そのような動機はないと、直ちにきっぱりと、否定したい誘惑にかられた」

となります。

 

④は、③の動機を説明しています。as は「のような」で良さそうです。普通なら、which という関係代名詞を使うところですが、as という関係代名詞を使って、そのものというより程度を表しているところが、描写の神経がこまやかと思います。

いずれにせよ、

「ご主人様が私に感じたような」

と前の such motivations にかかっていきます。

 

で⑤番ですが、in time に(同時に)that 以下を saw (分かった)したことになります。

that to do so は、to do so という不定詞が後ろから that にかかっています。

「そうするというあのこと」になり、saw の目的語であると同時に、⑥の would be の主語になっています。

つまり、that は関係代名詞ということですが、その周辺に修飾の単語がないので、かえって用心してしまいますが、その必要はなさそうです。

that よりも、to do soという不定詞がダイレクトに主語になっている方に気を付けるべきですね。いつものスチーブンスなら仮主語 it を使うのでしょうが、それをやると that が必要になり、先ほどの that とともにthat だらけになってしまうので、それはやめにしたという感じでしょうか。

ところで、would は、もちろん仮定法で、心の中で思ったことですが、外見的な形には現れないこういう事態は現実に進行しているわけです。こういうところが、英語のクセで、それが英語ネイティブは面白いと思っているということを、私たちは面白いと思わないかんのでしょうね。

 

それが⑦ですが、

「状況は、ただただ動揺が広がったのだけでありました」

となります。

二人とも固まってしまって、何も言わず、外見に見える動きは何もなく、心の内を想像するのみ、ということで、想像を表現する仮定法をつかうわけで、その印の would が入るというわけです。

動揺としましたが、スチーブンスの側からならそういうことですが、ファラディさんから見れば。冗談が通じず、白けてしまっているわけです。本文は、situation となっていますから、両方から見ての状況なわけで、気まずさ、あたりがいいかもしれません。

 

ということで、

「もちろん、すぐさまきっぱりとご主人様がお考えになっているような動機などはないことを申し上げたい気持ちになったのは当然でございます。と同時に、そうすればますますご主人様の気持ちに油を注ぐことになると分かっておりました。そのまま、気まずさだけが大きくなっていったのでございます」

としました。