166番です。

 

Nevertheless, I could never be sure exactly what was required of me on these occasions.

 

途中に関係代名詞 what の節が入り込んでいるだけです。

分解も何も特に考えることもなく普通に訳せてしまいます。

 

「とはいうものの、そういう時にわたしがするべきことに納得がいってるわけではございません」

 

ということでいいと思うのですが、文法的なつながりがいまいちはっきりしないのが気になります。

 

I could never be sure exactly は、SVCの文型で、これで完結です。「確信ができなかった」です。

what was required of me on these occasions は、「そんな時に私がすべきこと」ですから、目的語(この場合は目的節ですが)ということになるのですが、これがどこに続くのがはっきりしないのです。

sure というのは形容詞で、目的語は取らないので、what 節の行き場がないと思うのですね。

そこが不思議な所なのですが、こういう繋がりで、しっかり意味が通じるし、これ以外に書きようがないとも思えます。

つまり、さすがノーベル賞と言うことになりそうですが、sure が便利な言葉なんだろうと思います。

 

もう一度書いておけば、

「とはいうものの、そういう時にわたしがするべきことに納得がいってるわけではございません」

と訳して、次に行きます。

  

 

165番です。

 

Over the following days, however, I came to learn not be surprized by such remarks from my employer, and would smile in the correct manner whenever I detected the bantering tone in his voice.

 

これも分解してみます。

 

① Over the following days

②     , however,

③ I came to learn not be surprized by such remarks from my employer,

④ and would smile in the correct manner

⑤ whenever I detected the bantering tone in his voice.

 

①と③はつながっているのですが、途中に②が挿入されているため、親切にコンマが入って、そういうことが分かるようになっています。

③の to learn not be surprized というのが、要注意のようです。なんとなく熟語つまりイディオムくさい感じがしますが、このままの形で辞書に出ていません。似たものが出ていて、それは learn to live with O (不愉快・苦痛などに)順応することを学ぶ となっています。

ということで、③も不定詞の to を補って考えることにします。その不定詞は受け身の形になっていて、それが not で否定されているのです。

つまり、驚かないことを学ぶようになった、わけで、何に驚かなくなったかというと、

ご主人様の例のごとくの冗談、にですね。

 

ということで、①②③は、

「とはいえ、しばらくたつと、ご主人さまのそういう冗談には驚かなくなっていました」

となります。

 

驚かなくなったばかりでなく、さらに、こわばっていた表情にも余裕が出てきたようで、それが④⑤となります。

スチーブンス本人は、余裕が出てきたと思っているのですが、はたしてそれが本当に表れているかどうかは、自分の顔の様子ですから自分では見れないわけで、そうであろうと想像した表現、つまり仮定法になっています。それが④の would です。

in the correct manner は、それに応じて、とか、それにふさわしく、あたりで、然るべく、などもありかもしれません。

「それに応じて顔を緩められるようになりました」

です。

 

それはいつかといえば、⑤ですね。ここはスチーブンスが detect した事実ですから、直説法の過去形で書かれています。

ご主人様の声に 冗談の調子が 感じられたときは いつでも

ですね。

 

ということで、全体は、

「とはいえ、しばらくたつとご主人様のそういう冗談には驚かなくなっていましたし、さらに、声の調子冗談めいたものが感じられたときは、それにふさわしく顔の表情を緩められるようになっていました」

となります。

  

 

164番です。

 

Then I realized he was making some sort of joke and endeavoured to smile appropriately, though I suspect some residue of bewilderment, not to say shock, remained detectable in my expression.

 

例によって分解してみます。

 

① Then I realized

②                        he was making some sort of joke

③                and       endeavoured to smile appropriately,

④ though I suspect

⑤                            some residue of bewilderment

⑥                    , not to say shock,

⑦                            remained detectable in my expression.

 

こんな感じになるでしょうか。

前の文163番では、スチーブンスはファラディ―さんが言っていることが、しばらくの間は、分からなかったと言っていました。

つまり、しばらくしたら分かったのですが、そのわかり方についての説明です。

 

①の I realized の目的語が、②と③になります。つまり、①②③はSVOの文型です。

 

②彼が冗談のようなことを言って、

③それに似合う笑いを浮かべて いることに

①しばらくして、気がついた。

 

となるので、これをつなぎ合わせると、

「しばらくしたら、私はファラディ―さんが冗談のようなことを言い、それにふさわしいにこやかな表情を浮かべていることに気がついた」

となります。

 

though でつながっている④以降は、I suspect の目的語として⑤⑥⑦があります。この⑤⑥⑦は、文になっているので、目的語と言うのではなく、目的節という方が正しいです。

そして、この⑤⑥⑦の文は、⑥の挿入句を除けば、⑤と⑦が、SVCの文型になっています。remained が、自動詞ということで、そういう状態でとどまっている、という感じです。

つまり、スチーブンスにはファラディさんがが言っていることは冗談だとは、やっとわかったけれど、表情はそれに追い付かず、自分の顔なので直接見ることができないので、見当をつけてみると、妙にこわばったままだったのではないかと思った、わけです。

それで、suspect を使っているのですね。

 

⑤は、ある種の当惑の残り物、となるのですが、残り物という名詞は、日本語では、残っている、と動詞に変えた方が自然のような気がします。

ある種の当惑のようなものが残っていた、とした方が日本語らしいと思うわけです。

その当惑というものは、⑥ not to say shock 衝撃というほどではないが、が挿入されていて、

そこまでの表情ではないにしても、

⑦私の表情には、検知可能な、つまり、はたから見たら分かるような当惑が

残っていたと疑われる、

となります。

 

まとめて、

「やがて、ご主人様は冗談をおっしゃっていて、それで笑っているのだと分かったのですが、私の顔には、衝撃とまでは言わないまでも、当惑の表情が浮かんでいたと思います」

としました。

 

    

 

 

163番です。

 

For a moment or two, I had not an idea what my employer was saying.

 

いつもこういう文だと助かりますが。

いつもの分解もするほどのことはなさそうですが、関係代名詞 what が使われていますので、ちょっとやってみてもいいですね。

 

① For a moment or two,

② I had not an idea

③                 what my employer was saying.

 

と、こんな感じになるでしょうか。

 

① しばらくの間、

② 分かりませんでした。

③ ご主人様がおっしゃっていることが

 

つなげて、

「しばらくの間、私はご主人様が何をおしゃっているのかわかりませんでした」

となります。

 

「すぐには、何をおっしゃっているのか理解できなかったのでございます」

としてもいいかもしれません。

 

さて、ここからは雑談ですが、こんな会話というか、言葉のやり取りは、どう考えても冗談に決まっているわけですが、それがスチーブンスには、急にはそうと思えなかったという方が不思議です。

奥さんを連れ出してくれて、食べ物はうちのでもちろん十分だが、近くの洒落たレストランに案内するとか、とにかく我々二人で話し込んでいるときに退屈しないように、気を使ってやってくれ、それをお前に頼むよというのが、ファラディ―さんの考えであることは当たり前だと思うのですが。

 逆に、そんなことにも考えが及ばないというのなら、ダーリントン卿の時には、スチーブンスと卿はどんな話をしていたのか、に興味がわきますね。

冗談もなくカッチカチの話に終始していたのでしょうか。

 

    

 

 

162番です。

 

She may be just your type.'

 

さいごにアポストロフィで閉じられていますので、ここまでがファラディさんのセリフというわけですね。

 

直説法の may be で書かれています。仮定法の might ではないので、確定的に「かもしれない」と言ってるところが冗談ということになるのでしょう。

 

いろいろ裏の意味はあるのでしょうが、

「案外、君の好みかもしれないよ」

と訳せますね。

 

 

 

161番です。

 

Keep her entertained in all that hay.

 

命令文になっています。主語は you ですから、それを補って普通の文にすると、

You keep her entertained in all that hay.

と書きなおすことができます。

SVOC の文型になっています。

前半は「あなたは 彼女を 喜んでいる状態に 保つ 」となりますね。

 

後半の in all that hay は、「干し草のうえで」ということになるのでしょうが、

hay と day のギャグとか、しゃれかもしれません。

day なら、in all that day 一日中、ということですが、ファラディさんとお客さんが話している間中、くらいで、意味としては穏やかです。

それを hay にすると、いきなり穏やかではなくなり、そこがファラディさんのアメリカ人的真骨頂ということになるギャグ、冗談の世界に なるわけで、スチーブンスは慣れていないのですね。

hay とday は勝手な解釈なので置いておいて、

「干し草の上で、おもてなしをしてやったらどうだい」

と訳しておきます。

 

 

 

160番です。

 

Maybe you could take her out to one of those stables around Mr Morgan's farm.

 

前後に引用符はありませんが、これもファラディ―さんの発言で、いくつか話したうちの一つです。

 

前の文と同じように、省略されている語句を補うことができます。

(I) maybe (ask you that) you could take her out ...

となります。補ってみると、

「お前に、彼女を外へ連れ出すように頼むことになるかもしれないよ」

となります。

 

で、どこへ連れて行ったらいいか、ですが、

モーガンさんの農場の周りで、人があつまるところ」、

つまり、レストランかカフェということになるのでしょうが、

ここでファラディ―さんは、農場 farm に関連して、stable 家畜小屋 という言葉をつかい、次の冗談の伏線を張ります。

 

ということで、この文は

モーガンさんの農場の近くの、どこか静かなところに連れていってあげたらいいよ」

と、訳しておきます。