143番です。

 

Membership, it was said, never at any point rose above thirty and much of the time remained closer nine or ten.

 

and でつながった二つの文でできているようです。分解してみます。

 

⓵ Membership, it was said, never at any point rose above thirty

② and much of the time remained closer nine or ten.

 

という感じに分解できると思います。

 

途中に挿入されている it was said の it は, 直接的には membership と考えればいいと思いますが、文を書き換えて、そのうえ関代 that をおぎなって考えるともっといいと思います。

It was said (that) membership never at any point rose above thirty and much of the time remained closer nine or ten.

つまり、it は that 以下の内容を受けているわけで、重文に見えるのですが、実は複文である事です。その中身である従属節の部分が内容的には一つのことを言い変えたり、言い添えたりして強調している重文に見えていると考えればいいと思います。

受動態になっているところを見ると、その内容が世間では言われていたんだとなります。

 

というところで、

「会員数は、どんな時でも30人を超えたことはなく、ほとんどの時は9人か10人以内に留まっていた、と言われていました」

となります。

 

 

 

142番です。

 

Much of the power and prestige it went on to gain derived from the fact that unlike other such organizations which have come and gone, it managed to keep its numbers extremely low, thus giving this claim some credibility.

 

長い文です。分解が必要ですね。

 

⓵ Much of the power and prestige it went on to gain derived from the fact

② that unlike other such organizations which have come and gone,

③ it managed to keep its numbers extremely low,

④ thus giving this claim some credibility.

 

このように分解しました。

⓵の文が主節です。倒置していて、 went on の目的語が文頭に出ています。これが強調されているわけです。最後の the fact は、②の関代 that につながります。

②は、unlike 以下がまるまる挿入句です。

③に関代 that はつながっているわけです。

④は、現在分詞を使って、副詞 thus の理由を補強しています。

 

つまり、

Much of the power and prestige it went on  

to gain derived from the fact

that it managed to keep its numbers extremely low,

というのが、中心になる文というわけです。

 

ということで、もう少し細かく見ていくことにします。

 

⓵は、書き換えてもとに戻すと、

 it went on  Much of the power and prestige 

となります。

「それは 大きな 権勢と 威信 の上を 進んでいた」

ということで、it はヘイズ協会のことですね。

「ヘイズ協会は、大きな権力と名声とをもっていた」

ということです。

それはどうしてかというと、to gain derived from the fact と書いてあるのですが、これをもう少し書き換えると、しつこくなるのですが、

to gain to be derived from the fact 

と、不定詞にできます。

「事実から 引き出されて 得ている」

ということですが、合わせれば

「ヘイズ協会は、事実から 引き出されて 得ている 大きな権力と名声とをもっていた」

となります。

 

で、どういう事実かというと、それが②以下になるのですが、②のついては、ほとんどが挿入句になっていて、

unlike other such organizations   which have come and gone

 関代 which 以下が先行詞 organizations にかかっています。

come and gone は過去分詞になっていますが、have がありますから、現在完了形となっていて、

「来ていて、そして 去っていった」

ということです。現在と過去の微妙な時間差を表すのは現在完了の取柄です。

ある一つの組織ができて、つぶれるということではなく、ある組織ができると、それまであった別の組織が消えて、全体の数は変わらなかったという感じです。最盛期には組織の数は十近くあったものが、三つか四つで落ち着いていた時期があり、最終的にヘイズ協会だけになってしまったという感じだと思います。

つまり、

「できては消えていく そのような 他の 組織と 違って」

となります。

 

どこがどのように違っていたか、それが③以下です。

「それ(ヘイズ協会)は 会員数を きわめて 少なく 維持する ように 運営した」

です。会員数を少なく維持すれば、一人当たりの会費が高くなるのですが、一流の執事に限れば、それも支払ってもらえるわけです。

 

それがもたらした結果が、④というわけで、thus は副詞ですが、

「その結果、この主張に ある 信憑性を もたらすことになって」

と分詞構文を訳せば、この文の意味がわかります。

 

というところで、まとめれば、

「ヘイズ協会は、できては消えていく そのような他の組織と違って 会員数をきわめて少なく維持するように 運営していました。それはその主張にある種の信憑性をもたらすことになって 大きな権力と名声とをもっていました」

となります。

 

 

 

141番です。

 

The Hayes Society claimed to admit butlers of 'Only the very first rank'.

 

今回は、内容は別にして、文自体は問題はないですね。

Sが、The Hayes Societyで、Vが、claimed です。

 

claimed to admit と不定詞が使われていますが、「一つの文で動詞は一つ」という原則があるからです。

一番目の動詞 claim に対し、二番目の動詞は不定詞とならざるを得ないわけで、名詞として扱われることになります。

つまり、「受け入れていること(名詞扱い)を主張した(動詞扱い)」です。

 

admit は、本来は動詞ですから、目的語があります。それが butlers です。

で、butlers には修飾語がついています。それが' 'Only  the very first rank' ですが、クオテーションで囲まれており、引用したことを表していますし、中身の Only は大文字になっています。

つまり、これはヘイズ協会のキャッチフレーズをそのまま引用したことを表していると考えられます。

「第一級のみ」「第一級だけ」の執事を受け入れていること、とでもなるでしょうか。

 

というところで、

「ヘイズ協会は、「第一級のみ」の執事を受け入れていることを主張していました」と直訳できます。したがって、

「ヘイズ協会は、第一級の執事だけが入会を許されると公言していました」

となります。

 

 

 

140番です。

 

In fact, many felt its power had become too great and thought it no bad thing when it was forced to close, I believe in 1932 or 1933.

 

そんなに長い文ではないのですが、分解して考えた方がよさそうです。

 

⓵ In fact, many felt (that)

② its power had become too great

③ and thought it no bad thing

④ when it was forced to close,

⑤ I believe in 1932 or 1933.

 

こんな風に分けてみました。①に関代 that を補いました。

 

⓵が本体になる文ですね。

many は主語で、「多くの人が」です。略さずに書けば、 many people です。動詞は、felt で、「感じた」となります。その felt の目的語が、関係代名詞の that ということですが、ここでは省略されています。補っておきました。

 

その that の内容、何を感じたかが、②で説明されます。

②は、SVC の文型で、S は its power で、V は had become で、C が too great というわけです。

「 その力が あまりにも 大きくなってしまった」

 

⓵と②のここまで、

「実際に、多くの人は その力が あまりにも大きくなったと 感じた」

です。

 

そうなると、どうするかがつぎの③ですね。

「そして、それを 悪いことではないと 考えた」です。

この主語は、①での many ですが、目的語の it が要注意です。

その内容は、④の具体的な事実ということになります。when は関係副詞なので直接に目的語にはなれないからこうなってしまうわけで、そうかたいことを言うなよ、と言いたくなります。

とはいえ、④は「それが閉鎖に追い込まれたとき」で、④の it は the Hayes Society のことですが、この閉鎖に追い込まれたという事実のことが、③の it というわけです。閉鎖という単一の出来事だけを指すのではなく、そこに至る顛末というか、いきさつのすべてを含んだ事柄が it ということです。

 

it にからめて、主語だか、目的語だか、省略してみたり、書いてみたり、読者を翻弄するところが、カズオ・イシグロのクセですね。

 

最後の⑤は、閉鎖に追い込まれたのが、

「1932年か1933年だと思いますが」

と付け加えています。

 

まとめると、

「実際に、多くの人は協会の力が あまりにも大きくなったと 感じており、たしか1932年か1933年のことだと記憶していますが、それが閉鎖に追い込まれたとき、そういうことも悪いことではないと考えました」

とします。

 

 

 

139番です。

 

But in the twenties and rhe early thirties, it exerted a considerable influence over much of London and the Home Counties.

 

今回はヘイズ協会の説明です。今でこそ話題にならないけれど、その昔は協会は影響力があったんだというのですが、それはすなわち大衆化という社会構造の変化の実態のことですね。

 

文自体は特に複雑ではありません。SVO構造の文の中に、時間と場所を表す句が前後にくっついています。

 

時間は、「しかし、20年代と30年代前半には」です。

場所は、「ロンドンとその近郊の県では」です。

county は県くらいの感覚だと思います。首都圏というような感覚ではないかと考えます。東京23区とその周辺という感覚だと思います。

 

文の本体は、SVOですが、Sが it すなわち、the Hayes Society で、V が、exerted で、O が、a considerable influence というわけです。

「それは かなりの影響力を 及ぼしていました」

となります。

 

というところで、まとめると

「しかし、20年代や30年代前半には、ロンドンとその周辺地域では、相当な影響力を持っていたのです」

となります。

 

 

 

138番です。

 

You may not be aware of the Hayes Society, for few talk of it these days.

 

謹賀新年

 

本年最初の文は複雑な文ではなくて助かります。

分解も必要ないようです。コンマで前半と後半に分かれています。後半の for 以降は前半の事柄の理由を述べていますね。

 

最初の may は、通常「かもしれません」と訳されますが、話者が「~だろうと」と見当をつけているのではなく、直説法で書かれているので、確定的に「かもしれない」と思っていることに注意すべきです。

もし、may が might になっていれば、それは仮定法として「想像」を表すことになります。相手の心情を想像して、「かもしれない」と表現していることになります。

日本語の「かもしれない」は、断定を避けている表現ですが、英語では二種類の「かもしれない」があるわけです。may と maight の違いです。現在形と過去形の違いではなく、現実と想像の違いということになるのです。ここが英語の味わいどころです。

日本では紙に書けば、それはゆるぎないものとして扱われますが、英語ではそうでもないのかもしれません。法律とか、契約文書とかを読んでみたくなりますね。

 

前半は、

「独社の方々は、ヘイズ協会をご存じないかもしれません」

となりますが、

「読者の方々は、ヘイズ協会をご存じではないでしょう」

とした方が、may の持つ確定感が出るかもしれません。

 

for以下は、

「今日では、あまり話されることはありませんから」

と、few が否定的に訳されます。

 

というところで、

「今日ではあまり話されることもありませんから、読者の方々はヘイズ協会のことをご存じないでしょう」

としました。

 

 

 

 

 

137番です。

 

The only instance that comes to mind is the attempt of the Hayes Society to devise criteria for membership.

 

特に複雑ではないので助かります。でも分解は必要です。

 

⓵ The only instance

②      that comes to mind

③ is the attempt of the Hayes Society

④         to devise criteria for membership.

 

こんな風に分解しました。適当に字下げをしたので、レイアウトが崩れていなければ、わかりやすいと思います。

⓵と③で、SVCの文型になっています。

⓵の The only instance が主語です。③の is が動詞で、the attemot が補語です。

「唯一の例は ヘイズ協会の試み です」

となるわけです。

 

②の that 以下は関代で instance にかかっていて、主語を修飾しています。

「心に浮かぶ唯一の例は」

となります。

 

④は、不定詞句ですが、devise はもとは動詞なので、意味上の主体(主語)と意味上の客体(目的語)があります。

それが、主語は③の the Hayes Society で、目的語は criteria for membership ということになります。

「ヘイズ協会が 会員資格の条件を 明確にした (こと)」

という名詞として、attempt の of の目的語になっているというわけです。

 

というところで、

「私が覚えている唯一の例は、ヘイズ協会が会員資格の条件を明確にするという試みでございます」

としました。